古代ギリシア語における語根名詞の現われとその印欧語的解析
吉田 育馬(日本学術振興会特別研究員/筑波大)
印欧祖語には語根に直接語尾をくっつけてできる最も原初的なタイプの名詞,語根名詞があった.本発表では古代ギリシア語の語根名詞102語根を印欧祖語のアプラウト階梯別に分類し,印欧語学的に検証してみた.
まず古代ギリシア語において中性は性別のわかる79語根中5語根 (6.33%) で,性は他の印欧語と完全に一致し,印欧祖語の状況を反映していること,また ῥὼξ (Archil. 191), 旧属 ῥᾱγός f.「葡萄の実の一粒」< IE *sróh2g-s, *sr̥h2g-ós や δω̃ (Hom.), 旧属 δὲσ-ποινα (Sapph. 118. 5) n. 「住居,家」< IE *dṓm, *dém-s 等に印欧祖語の強格-弱格間の2つのアプラウトタイプ(o-ø, e-ø の mobile と ō-e の static)が保存されており,7語根(10語)に及ぶことを示した.