「短型特殊手紙文にみられる伝統行動特徴の社会言語学的研究」
老田 真由美(北陸ゼロックス株式会社)
本研究では,短型特殊手紙文『日本一短い母への手紙』を資料として,(I) 書き手の読み手に対する伝達態度が言語形式として,どのように反映しているのか,また,(II) その伝達態度の背後にどのような書き手の「意識」が見られるか,さらに,(III) その「伝達形式」・「態度」に世代・性といった社会言語学的要因がどのように関わっているのか,ということを明らかにすることを目的とした.
方法として,書き手の読み手に対する伝達行動を多角的な角度から検証するため,大きく分けて,(A) 「手紙全体の特徴」に関する調査と (B) 「手紙の中の有述語文のモダリティ特徴」に関する調査を行った.
その結果,以下のような知見が得られた.(1) 書きことばの範囲内でも話しことば的要素を取り入れた言語形式をとる傾向があることが分かった.(2) 伝達行動特徴には,年層があがるにつれて,世代差が認められる.(3) 伝達行動特徴には性差が認められる.