アラビア語と日本語の感情表現語彙の類義構造
イブラヒム ワリード(学習院大大学院)
言語表現の中でも,喜怒哀楽や親愛・嫌悪などの感情を表現する語彙群には,特に各言語ごとで特有な構造を持ちやすい.そして,Wierzbicka (1992) などの先行研究にも指摘されているように感情語の意味内容は文化普遍的なものではなく,特定の文化圏に固有のものである.
本研究では,言語外の社会的「価値観,発想」が言語内の語彙構造を規定するという前提に立ち,アラビア語と日本語の感情表現語彙「愛情語」について類義語間の弁別的機能を担う意味特徴のズレに注目し,両者の語彙構造の異同を考察した.その結果,両言語の愛情話の間には,愛情とその表現に対する価値観・発想の相違が認められ,それが愛情語の意味構造に大きな影響を与えていることが明らかになった.