On Multiple WH-Interrogatives in English: Reformulation of the ECP
小林 亜希子(広島大大学院)
従来,移動操作と chain 形成操作はリンクすると考えられてきた.即ち,合法的な移動が起これば自動的に合法的な chain が形成され,それが合法的な LF 表示を構成するという考え方である.この仮定では派生の合法性と表示の合法性が大部分重複してしまい,ミニマリストの精神に合致しない.本発表では,chain は FI から導出される条件を満たす時にのみ形成が可能になるとして,移動操作とは独立した chain 形成ルールを設定し,それが ECP に代わる表示制約として様々なタイプの英語多重 WH 疑問文データの文法性を説明することを示す.具体的には,chain 形成を可能にする要因を移動要素間の「同一性」と見なし,同一性が保証されるときにのみ chain が形成されると考える.その保証がいつなされるかにより,D(erivational)-chain, LF-chain 2種類の異なる chain が存在し,いずれかの chain を形成すればその LF 表示は FI を満たし,収束する.