日本語アスペクト論によせて
副島 健作(九州大大学院)
本研究では,現代日本語における形態論的なカテゴリーとしてのアスペクトの形式の,多様な用法と意味を正しく捉え直し,その体系化を試みる.
シツツアル,シテイル,シテアルは,動作と結びついた状態(=継続性)を示し,スルはそれを特には示さないという点で異なる.状況がまだ成立していない状態(=不完結性)を示すシツツアルと,その成立後の状態(=結果性)を示すシテイル,シテアルとは,状況の成立点を境に対立する.シテアルは,状態の主が客体にあること(=被動作主指向性)を示し,シテイルはそれを特には示さないという点で異なる.
このように,日本語のアスペクトは動作を静的事態としてさしだす,不完結相シツツアル,主体結果相シテイル,客体結果相シテアルと,そういった意味を特には表さない非継続相スルの4形式が,パラディグマティックな対立関係にある.