心内辞書表示の音韻単位の個別性と普遍性
大竹 孝司(獨協大)
心内辞書とは我々の脳に蓄えられている語彙情報の集合体を指し,人間が母語を産出したり理解することができるのは,この辞書の存在が前提と考えられる.そこには意味を始め,統語,形態,音韻など狭義の言語情報ばかりか文字なども含めた広義の言語情報が存在するとされている.この辞書内の音韻単位は,音韻構造の表示と同様,様々な単位を想定することができるが,音韻構造の表示ほど明らかにされていないことが多い.
本発表は,この心内辞書に用いられている音韻単位のうち,音節とモーラの2つの単位について心理言語学の手法により明らかにすることを試みた.今回の発表では第2言語の学習者が母語と外国語の語彙に対する心内辞書をいかなる音韻単位によって表示するのか,外国語の学習のレベルとどのような関係があるかの2点に焦点を当て,そこから普遍性と個別性を論じた.