コモックス語(セイリッシュ語属)における「複数性」について
渡辺 己(日本学術振興会特別研究員)
コモックス語(カナダ,ブリティッシュ・コロンビア州,セイリッシュ語属)は1・2人称においては義務的に数の区別をする.それ以外のもの(3人称の他,分布的複数も含む)については複数性は明示されていなくても文脈から判断される.ただし,複数性を明示する手段もある.従来の研究では,複数性を明示する CəC 重複法と接辞 -Vg(-) にかんしては,ある程度の記述があったものの,それ以外についてはあまり触れられることがなかった.実際は,これらふたつの手段の他,非生産的ではあるものの,語根の母音交替,2種類の接尾辞,そして補充法も複数性表示にかかおる.さらに,複数性は分析的にも表現でき,談話の中で特に複数性を強調するときに使われる.