評価的モダリティと認識的モダリティの連続性
山田 陽子(東京大大学院)
日本語の命題態度副詞(命題内容に対する話し手の心的態度を表す副詞)は,一般に,評価副詞(「幸いにも」のように,命題内容に対する話し手の評価や気持ちを表す副詞)と,認識副詞(「たぶん」のように,命題内容の確実性の度合いに関する話し手の認識を表す副詞)とに下位分類されてきたが,評価副詞と認識副詞の違いは,話し手が命題内容を事実として捉えるか,不確かなものとして捉えるか,という視点が要因になって生じていると考える時,評価副詞と認識副詞は,明確な境界線によって二分されているのではなく,境界が曖昧で連続的な関係にあることがわかる.命題内容が事実なのか不確かなのかどちらか明瞭には捉えきれない場合もあるからである.このことは,畿つかの統語現象からも裏づけられる.このように考えると,「どうせ」「確かに」のように,評価副詞としても認識副詞としても解釈できうる副詞が存在するという現象も理解できるものである.