語彙文法による日本語の介在性構文の分析
平川 八尋(東京工業大)
佐藤 (1997) では,日本語における介在性構文の例として (1) を提出している.
(1) a. 患者が注射をした.
b. 患者が診察をした.
(1a) は「患者」が経験者 (Experiencer) 「患者が注射器の針を刺すという行為を他者から受けたのに対し (1b) では,経験者としての解釈は成立しない.発表では,(1) で観察された意味解釈の相違が,動詞のアスペクトから説明されることを述べ,特に Ritter & Rosen (1993) で提案されている have の Functor 仮説(語彙的意味を持たず,外項を加えるはたらきをもつ)を用いて分析を試みた. (1) の基底文として (2) を提案した.
(2) 患者が[[X に]注射をし] (sase) だ
「~させ」が Functor であると想定すると,(1) の経験者が理論的に説明されることを主張した.