Merge (Comp,INFL) の可能性
西前 明(明治学院大大学院)
Chomsky (1995: Chap. 4) で仮定された統語捜査 Merge の適用例の一つとして,主要部 (lexical item) どうしの付加 ("Head-to-Head Merge Adjunction") が考えられる.この種の操作の適用を受ける例が自然言語に存在するかどうかを, Comp とlnfl の組み合わせ ("C(omp)-I(nfl) Merge Adjunction") に 絞って論じた.まず,C-I Merge Adjunction の最も明白は適用例として Belfast English の for-to 不定詞を提出し,さらにこの操作を仮定すると説明できる現象として,(I) 英語の wh 島違反現象における主語と目的語の非対称性,(II) 英語の do-support に関する現象 (Who met him? vs. *Who did meet him? (did non-emphatic)),(III) ドイツ話の V2 現象,を取り上げた.(I) と (III) の議論では,Chomsky (1995: Chap. 4) の経済性条件と Sauerland (1995) の強素性の定義に従い,(II) と (III) では動詞の屈折の過程 (lexical vs. postlexical) についても論じた.