能格性と節の構造:
カパンパンガン語(フィリピン)のデータから
北野 浩章(東北大)
本発表では,フィリピン,中部ルソンのカパンパンガン語について,態 (voice) に関するいくつかの分析のうち,能格分析 (ergative analysis) と等位構造分析 (equational analysis) の検討,適用を試みた.結論としては,格体系については,能格分析が有効であるが,等位構造分析は,部分的には有効であっても,言語全体に適用することには無理があるようである.このことは,異なる domain や sub-system に対し,異なる分析をすることが適切な場合もある,ということを示唆している,さらに,カパンパンガン語において,記述研究と理論言語学,言語類型論が協力して取り組むべきいくつかの問題,すなわち,(1) 能格形式の機能,(2) 名詞句と述語の平行性,(3) 能格と絶対格の非対称性,を議論した.