フィンランド語の名詞修飾における出格と分格の用法
千葉 庄寿(東京大大学院)
本発表では,フィンランド語の名詞を修飾する出格,分格修飾語の用法を,「部分」を意味する名詞 osa を例にとり論じた,調査では,雑誌コーパスに現れた osa +出格,分格修飾語の用例を収集し,osa が現れる文法環境と修飾語の格の分布の相関を調べた.
発表では,いくつかの頻度の高かった構文パターンについて,osa の位置により,修飾語の格の出現頻度がどう異なるかを分析した,その結果,(a) 節の主語,(b) 他動詞節の目的語,(c) 主動詞が受動形の節の目的語,といった環境で,osa は高い頻度で出格をとって現れた.一方,これらの環境とは対照的に,(d) osa がコピュラを主動詞とする節の述語として現れた場合,修飾語の9割以上が分格で現れた.発表では (d) の環境で,名詞句は多くの場合不定であることに注目し,osa の定性が修飾語の格の選択に影響していることを論じた.