「道順説明」における空間の参照フレームの折衝と確定過程
村上 恵(三重大)
本発表では,「道順説明」という課題達成実験の談話資料を元に,特に空間の参照フレームに焦点を較って談話分析を行った.まず,表現形式として,絶対的フレーム3種,相対的フレーム2種を指摘した.次に,説明者・被説明者間での折衝と確定過程で次の3点を指摘した.(1)「赤の道順」では,参照フレームの対立が見られたのは20組中8組で,母語場面より接触場面の方が多い.また,確定された参照フレームは,説明者のそれにほぼ準拠されている.(2) 説明者・被説明者の役割交替後の「緑の道順」説明では,「赤の道順」での対立組はほぼ解消された反面,新たな対立組も生じた.その確定までの過程には,母語場面と接触場面で異なる傾向が見られた.(3) 「緑の道順」で対立の見られなかった組では,説明者個人が言語/文化的に習得した参照フレームよりも,「赤の道順」で相手との相互作用を経て確定されたそれが優先される傾向が窺えた.