最適性理論による日本語の動詞活用の分析
中道 尚子(東北大大学院)
「子音動詞語幹+ /-ta/」における形態音韻変化には,/tob-ta/ → [ton.da] のように語幹末子音が鼻音化するもの,/kat-ta/ → [kat.ta] のように重子音化するもの,/kas-ta/ → [ka/si/ta] のように母音 /i/ が挿入されるもの,の3つの音韻変化がある.これらの音韻変化は日本語では許されない子音連続のタイプを避けるために起こる.
規則による分析では,なぜ他の2つの音韻変化が起こらないのかを明示できなかったが,0T( Prince & Smolensky 1993) では,日本語の適格性制約と忠実性制約の相互作用によって論理的に可能な複数の候補形が評価され,上位にランクされる制約に対して最も違反の少ない候補形が最適形として選ばれるので,これを示すことができる.本研究に関連する制約のランキングは,CodaCond >> *NC, Ident-IO[strident], Ident-IO[dorsal], Max-IO >> Dep-I0, Agree-[place] >> Max-IO[voice] >> Ident-IO[nasal], Ident-IO[labial] である./kak-ta/ → [kai.ta]に見られる Opacity は,MCCarthy (1998) が提案した Sympathy Theory を用いて分析した.