音声言語知覚の知覚最小単位について: ERP を用いた脳波実験
菅井 康祐(筑波大大学院)
ヒトは言語を知覚し理解する第一の段階として,物理的には切れ目のない音声を離散的な音韻単位として知覚する必要がある.本研究では日本語母語話者が,日本語音声を聴取する際の最小単位について,時間長から探った.また,本研究では,聴覚情報処理の受容的な側面をより直接的に捉えるため,ERP (事象関連電位)を測定する手法を用いた.
本実験においては,一音節 ([pa]) から三音節 ([papapa]) で,持続時間長が異なる13の無意味語音刺激を7名の日本語母語話者に聞かせた ERP 波形を記録した.分析対象は,波形上の P3 におけるピーク潜時と波形全体のパターンである.実験の結果により,音節数とは別に,持続時間長の点から 308 msec. ~ 436 msec. あたりに知覚単位の境界があることが分かった.その長さの範囲に収まるものは,音節数に関わらず一つの知覚の単位として処理されることが明らかになった.