下位種への照応
蔵藤 健雄(琉球大)
「太郎はコンピュータ/Apple Power Book G3 を使った.花子もそれを使った.」のような例で,先行詞が「コンピュータ」の場合「それ」は同一個体として解釈される(トークン読み)が,「Apple Power Book G3」が先行詞の場合, 「花子も Apple Power Book G3 を使った」という解釈(タイプ読み)が支配的である.この違いを以下のように説明する.先行詞が存在量化されている場合「それ」は動的に束縛され,トークン読みが生じる.先行詞が機種名のような表現の場合,「Apple Power Book G3 というコンピュータ」のように解釈され Apple Power Book G3 は下位種を指す表現に翻訳される.種を指す表現は固有名詞同様 referential なので,「それ」の指示用法によって照応関係が成立する.この場合「それ」は種を指しているのでタイプ読みが生じることになる.