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日本語・朝鮮語・マラテイ語・ネワール語の移動表現の類型

松瀬 育子(神戸大)

Talmy (1985) は類型論の観点から移動表現を分析し,移動の抽象的意味要素として,Figure,Ground,Motion,Manner,Cause,Pathを設定し,各言語がこれらのパラメターのうちどの要素を表層の動詞としてconflateし,具現化するかを基準に,次の3つのパターンに分類した.

A. Manner/Cause+Motionロマンス語を除く印欧語,中国語等
B. Path+Motionロマンス語,セム語等
C. Figure+Motionアツゲウイ語,ナバホ語等

上の類型パターンではSOVのアジアの言語がどのパターンに入るのかはっきりしない.日本語には「はいる,のぼる,わたる」等Path + Motionをconflateする動詞がある一方で複合形もとる.Motion+Mannerに分類される英語の John walked to shcool という事象は,「ジョンは学校に歩いた」が容認されず,「ジョンは学校に歩いていった」が適切となる.さらに朝鮮語,マラテイ語,ネワール語でも同じように動詞がDeixisを示す「いく」の過去形によって表示される.これらの言語では他のManner,Cause,Pathの概念より,話し手のDeixisがより基本的な範疇として語彙化されている.

本発表では,アジアの4言語の観察を通して,移動事象と文法構造の関係を表層構造のConflationのパターンとして見るのではなく,その意味をプロトタイプ的に捉え,位置変化を表す意味要素がどの文法項目にわたって表されるのかというTalmyとは逆の見方が同時に有効であることをさぐる.さらに,Path概念とManner概念の階層関係をシステム化することによって,これらの言語の移動の「基本スキーマ」を提示して,移動現象と観察者の関わりという点から「いく・くる」の優位性を説明する.

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