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英単語の視覚認知における音韻処理

門田 修平(関西学院大)

語の視覚認知に際して,読み手は心内辞書 (Mental Lexicon) の各語彙項目へのアクセスが必要になる.そしてそれぞれの語彙項目には,音韻情報,語彙範疇情報,意味情報,等が適宜検索されるべく蓄えられていると考えられる.

本発表では,英単語の視覚提示をした際に,(1) その語彙範疇,意味,音韻のうちいづれの語彙情報が喚起されやすいか,(2) 音韻符号化を制限するような干渉課題を同時に課すと,単語の音韻検索に干渉するだけか,語彙範疇,意味情報の検索にも同程度に干渉するのか,について検討した結果を報告する.これにより,語へのアクセスに音韻情報の利用が不可欠な操作であるかどうかについて示唆を得ることが目的である.

日本人大学生に対し,英単語2語のペアをパソコンのディスプレイ上に同時提示し,各々の単語ペアが,(1) 同じ語彙範疇に属するかどうか,(2) 意味的に類似しているかどうか,(3) 同音異義語であるかどうかの判断を,通常の提示(条件 PU)と,7桁の数字列を頭の中で反別して課題の遂行中記憶しておく条件(条件 PR)で求め,反応時間(RT)を測定した.

本研究では,主に次のような結論が得られた.(1) 音韻情報の検索は,それが必要な場合には,語彙範疇や意味の情報の検索よりも迅速にそれらに先だって行われる可能性がある.(2) しかし,音韻符号化の制限が,音韻情報の検索は遅らせるものの,単語の語彙範疇や意味情報の検索にはほとんど干渉しないことから,それらの情報へのアクセスには音韻符号化およびその保持(Pre-Lexical および音韻ループ内の音韻情報)は必須ではない可能性がある.外国語としての英単語の意味認知において,音韻プロセッサを経由するルートだけでなくそれをバイパスするルートがあるとする二重経路説の立場を支持する結果である.

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