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中国語陽谷方言の r 化について

東ケ崎 祐一(東北大大学院)

中国語の官話系方言に特徴的に見られる語法のひとつに r 化がある.本発表で取り上げる山東省陽谷方言の場合,その形はいくつかの変異がある.

a: -r鴿kərʂəʂər
b: l...rtuətluərilɛr
c: -RkənkəRkəikəR
d: -ɭpʻipʻiɭtuəntuəɭ

a では反り舌音の r が付くが,b では更に dental の子音,あるいは介音 i, ü の後に l が現れる.これに対して c では r よりも舌尖が更に後ろに反り,少し上がった R が,d では反り舌側面音 ɭ が coda に現れる.

陽谷方言の r 化を説明するためには,r 化を起こす接辞がどのような構造をもつのか考える必要がある.本発表では,変異形の現れる条件,及び他の方言に見られる r 化形から,陽谷方言の r 化接辞は slot を持たない音であり,r 化を引き起こす要素は素性 [+back] であるとすることによって,妥当な説明ができることを示す.

r 化接辞が語根に付加されたとき,coronal をもつ音がある場合には [+back] が拡張してそれに結びつき,その結果二重調音をもつ単音の一部として l が現れる (tuə > tluər).coronal をもつ音が母音である場合 (i, ü) は二重調音になれないので,resyllabification が起こる (iɛ > ilɛr).また coronal の音が反り舌音のときは,spread は block される (ʂə > ʂər).一方,coda に coronal をもつ n, i がある場合には,r 化接辞が coronal node と結合したとき n, i が消え,残った slot に r 化接辞の素性が入って R が現れる (kən > kəR).さらにこれと同じ条件で,coronal をもつ音が他にある場合,r 化接辞に coronal が spread して ɭ が現れる (tuən > tuəɭ).

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