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再帰形の logophoric な機能について

杉浦 滋子(東京大)

典型的な他動詞は,あるもの(主語)が別のもの(目的語)に対して物理的な作用をあらわすことをあらわす.再帰的事態をあらわすために使われる特殊な指標は再帰的指標と呼ばれる.さまざまな言語を見てみると,再帰的指標は,(i) 自動詞的用法に用いる,(ii) 相互的事態をあらわす,(iii) 中間態の指標としてあらわれる,(iv) 感情や認識をあらわす述語の一部としてあらわれる,(V) 自然発生的事態をあらわす述語の一部としてあらわれる,(vi) 強調する,(vii) 従属文の内容がある主体の考えを表していて,従属文中にその主体があらわれるとき,従属文中のその主体をあらわす,(viii) 事態が先行詞の視点から語られていることをあらわす,などの他の機能を担うことが多い.Kemmer (1993) では,再帰の中心的機能とこれら他の機能の意味の相関図を提示しており,それらと中心的機能の共通項についても考察している.しかし,疑問の残る点もあるので,それに代わる相関図を示した.さらに,再帰の中心的機能と (vii) (viii) の共通点を説明するために,「物質的存在としての自己」と「精神的存在としての自己」の両面をもつ「自己」を想定することを提案した.その背後には,その双方を自己の側面としてとらえる人間の意識がある.これによって,日本語のジブンのように,「物理的な存在としての自己」を表現する場合と「精神的な存在としての自己」を表現する場合で違った振る舞いを見せる再帰形があることや,経験者が照応において特殊な振る舞いをすることが説明できる.

参考文献

Kemmer, Suzanne (1993) The Middle Voice. (Typological Studies in Language vol. 23) John Benjamins, Amsterdam/Philadelphia.

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