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現代ロシア語副動詞 (converb) の談話的働き

北上 光志(京都産業大)

現代ロシア語副助詞は,アスペクトを持つが,テンス,ヴォイス,ムードは持たず,また本動詞と行為主体が一致する.そして,文中での語順が自由であり,文脈によって意味が決定される.従来のロシア語副動詞研究は,そのほとんどが副助詞がどのような意味で用いられるかといった意味分類や副動詞と主節の意味関係だけによる副動詞の意味決定条件の提示,また不完全な副動詞の使用分布の指摘である.現代ロシア語副動詞と物語の流れとの談話的な関係については十分に論じられていない.そこで新たな分析方法を提案してこのことを考察する.副動詞の使用域と発話表現との位置関係及び登場人物の情報的価値に注目し,以下の4基準を提案する: 1) a) 直接話法構文,b) 発話表現(直接話法構文および発話文)の先行文(直前,二つ前,三つ前,四つ前),c) 発話表現に挟まれた文,d) 発話表現の後続文(直接,二つ後,三つ後,四つ後),e) その他の文,における副動詞の使用分布,上記の使用域での副動詞の 2) アスペクト,3) 意味用法の分布,4) 副動詞の使用と物語の重要人物との関係.一般に,発話表現は物語の中で緊張感を与えたり,劇的効果を出したりして語の山場,あるいは foreground に多く現れる.全体的に副動詞は,発話表現の周辺で多く用いられる,不完了相が多い,意味用法に偏りがある,重要でない人物の行為を表す場合に多く用いられる.一方,部分的に副動詞は,発話表現およびそのごく近くでの際立った使用,重要人物では発話表現での使用が目立つ,といった特徴を持つ.これらのことを考えると,談話における現代ロシア語副動詞の基本的働きは background であると言えるが,foreground と関連した側面も持っている.本発表は現代ロシア語副動詞の談話的働きを明らかにすると同時に,タイポロジーの問題に関連して,non-finite forms にも foreground 的働きがあることを示した.

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