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現代モンゴル語の過去の事実を指し得る動詞語尾について

水野 正規

近年,橋本 (1993)・Kim (1995)・飯田 (1996) に見られるように,現代モンゴル話の過去の事実を指し得る動詞語尾についての論文・学会発表が相次いでいる.これらの論文・学会発表は,いずれも,従来の「過去」という概念のみでは,記述がうまくいかないことを指摘している.筆者は,先行研究に加えて,-laa,-zhee,-v が -san(以下,異形態をこれらの形で代表する)とは異なり,名詞句を修飾できないことや否定形語尾を取らないことも考察に入れて,時制という概念では4つの動詞語尾の違いを説明できないことを指摘する.その上で,「認識」と「知識」という二つの概念を導入して。laa,-zhee,-v の意味の違いに加え,-san の意味についても,以下のように分析する.

-laa: 特定の事実に対して,発話時点までに,発話者(疑問文の場合は聞き手)の連続的な「認識」が存在していることを示す.

-zhee: 特定の事実に対して,発話時点までに,発話者(疑問文の場合は聞き手)の「認識」に,空白があったことを示す.

-v: 特定の事実に対して,発話時点までに,発話者(疑問文の場合は聞き手)の「認識」は非連続であるが「知識」は存在していたこと(例えば回想)を示す.

-san: 発話者(疑問文の場合は聞き手)の「認識」・「知識」のありようとは関係なしに,特定の事実の「完了」を示す.

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