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英語の名詞転換動詞の比喩的意味拡張

谷脇 康子(関西学院大大学院)

名詞転換動詞が比喩的に意味拡張された用法に着眼し,次の2点を解明することを試みる.

(1) 動詞転換された場合,比喩的な意味を持ちうるのはどのようなタイプの名詞であるのか.

(2) 比喩的な意味の出自はどこか.字義から比喩への拡張モデルはどのようなものか.

(1) カテゴリーの中で典型性のもっとも高い成員「プロトタイプ」,もしくは心理的にもっとも基本的な範疇レベル「基本レベル」に相応する名詞に,動詞転換された場合の比喩的な意味を持つ資格が与えられる.

例: carpet the floor/shag-rug the floor 字義通りの意味では両者とも容認される.

be carpeted with flowers/*be shag-rugged with flowers

「基本レベル」の carpet のみ比喩的な意味拡張が認められる.

難解な概念を平易な概念で説明する,という比喩の方向性を考えると,周辺的な名詞・下位範疇の名詞は,独自の情報が過密なので,意味拡張に対する抑圧になるのであろう.

(2) 比喩的用法の名詞転換動詞と,主語・目的語・前置詞句との選択制限を観察すると,親名詞の特性が動詞に残留している.名詞は単一の特性から成る一面的な構造を持つのではなく,様々な特性が束になった階層構造を成すものであり,文脈により優勢な特性が変わってくる.名詞転換動詞の字義通りの意味が,およそ文脈の数ほど生じうるとすれば,それはこのような名詞の多義性による.ところが,比喩的な意味に関しては概ね1~2個に限定される.多々ある特性の中で,ある名詞にとってもっとも卓越した特性は,Pustejovsky (1995) で論じられる TELIC role,すなわち名詞の持つ機能・目的である.動詞転換される名詞は,人間がその事物に関わって何らかの行為をする場面での,最終的な目的や機能を持つ.比喩的な意味を持つ名詞転換動詞は,この機能・目的が導く特性を受け継いだ名詞が,動詞の語彙概念構造の定項 [N] に挿入され実現されたものとして捉えられる.

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