プロセス制御スキーマによるアスペクト合成モデル
―アスペクト補助動詞構文の体系化に向けて―
岡 智之(大阪外国語大大学院)
Narayanan 1997 は,アスペクト表現が運動感覚制御のプリミティヴに基づいているという基本的仮説の上にたって動詞アスペクトのコンピューターモデルを提示している.本発表ではこのモデルの controller(プロセス制御スキーマ)を援用し,イベント構造スキーマとの結合による独自のアスペクト合成モデルの構築を試みた.このモデルでは準備,開始,過程,終結,結果,取消し,停止などのプロセスの展開が,アスペクト補助動詞構文(シヨウトスル,シハジメル,シテイル,シオワル,シカケルなど)によって表示されることを体系的に示そうとした.イベントタイプとして活動状況,到達状況,維持の局面についてこのスキーマを適用し,各アスペクト形成の意味的一般化を試みた.後半では,本動詞からの拡張と言う観点からテオク構文を分析し,対象の存続→結果の保持→効力の保持という拡張システムについて明らかにした.