現場指示用法の指示詞と無助詞
樋口 功(西南学院大)
本発表では,次の (1) (2) それぞれに示すような,述語に「動詞-テイル形」および,性状規定形容詞を用いた「気がつき文」か,主語名詞句に現場指示用法の指示詞が伴う場合とそれが伴わない場合に示す,「ガ」「無助詞」の生起に関する平行的対立の説明を試みた.
(1) a) あ,この人 ø 死んでる! | b) あ,人/田中君/彼が倒れてる! |
(2) a) わー,この花 ø きれい! | b) わー,花/星/富士山がきれい! |
結論として,(1),(2) にそれぞれ観察される対立的振る舞いは,現場指示用法の指示詞固有の「存在前提化機能」に起因するものであり,(1) と (2) の聞に観察される平行的振る舞いは,両者が共有する認知的・意味的・統語的・情報構造的平行住に基づくものであるという主旨の分析を提示した.あわせて,同タイプの述語を有する文の主語名詞句をマークする助詞の対立を言表事態の対立に求める久野 (1973) の分析の限界を明らかにした.