琉球方言の母音の長さとアクセントの類別
―沖縄本島北部・金武方言の場合―
この発表は金田一 (1974) のアクセントの語類にしたがって,長母音をもつことで知られている金武方言の2音節対応の全語彙を調べ,母音の長さとアクセントの関係を考察したものである.第1類から第5類までの母音の長さをまとめると以下のようになる.
第1順; CVCV (56), CVVCV (2), CVVCVV (1)
第2類; CVCV (18), CVVCV (2), CVVCVV (1), CVCVV (1)
第3順; CVVCVV (33), CVCVV (14), CVVCV (7), CVCV (4)
第4順; CVVCVV (14), CVVCV (12), CVCVV (1), CVCV(4)
第5順; CVVCVV (5), CVVCV (9), CVCVV (4), CVCV(1)
調査の結果,母音の長さに関しては次の3つの傾向がある.1) わずかな例外を除いて第1, 2類は母音が短く,第3, 4, 5類は第1音節か第2音節のどちらかの母音,またはその両方が長い.2) 第3, 4, 5類は大別すると「CVVCVV」と「CVVCV」に分かれる.首里方言では,前者は第1音節も第2音節も短い「CVCV」で,後者は「CVVCV」である.3) 第3, 4, 5類は,2) の他に第1音節が短く,第2音節が長い「CVCVV」がある.
アクセントに関しては次の3つの傾向がある.1) 第3, 4, 5類の「CVCV」は例外3語を除いて,第1, 2類の「CVCV」と同じ高始まりのアクセント型である.2) 第3, 4, 5類の「CVVCV」は,例外3語を除いて同じアクセント型だが,第1, 2類の「CVVCV」とは明らかに異なる.日本語に対応語がない琉球方言独自の語の調査では,この第1, 2類の「CVVCV」と同じアクセントの型をもつ語は8語あったが,そのうち2語を除いてすべて複合語であった.3) 第3, 4, 5類の「CVVCVV」も,「CVCVV」も例外なく各々同じアクセントの型をもつ.
調査の結果から分かるように,母音の長さとアクセントは相関関係があるといえる.