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イディッシュ語におけるヘブライ語起源の動詞について

佐々木 嗣也(日本学術振興会)

イディッシュ語の形成発展における融合の過程には,ヘブライ語・アラム語(以下ヘブライ語と省略),ロマンス語,ドイツ語,スラブ語という4つの源語 (source language) が関与しているが,このうちイディッシュ語に理論的に入ることが出来た部分を決定案 (determinant) と呼び,又,決定素のうちイディッシュ語に実際に入った部分を構成素 (component) と呼ぶ.本発表ではヘブライ語・アラム語構成素に属するイディッシュ語の動詞に関して,その取り込まれ方のタイプを分類し,又,その分類の際に設定したパラメーターの間の相関関係を検討する.

まず始めに動詞の取り込まれ方のタイプを分類するにあたってイディッシュ語,ヘブライ語の側それぞれに2つずつのパラメーターを設定する.イディッシュ語の側の第1のパラメーターは,その動詞がどのようなイディッシュ語の動詞の「骨組」を取るかどうかで,動詞語尾 -(e)n を取る場合と,補助動詞を取る場合とがあり,後者には zajn 'to be' の場合と vern 'to become' の場合とがある.イディッシュ語の側の第2のパラメーターは,その動詞が再帰代名詞 zix を取るかどうかである.ヘブライ語の側の第1のパラメーターはその動詞がヘブライ語のどの動詞屈折形であるかで,子音の「骨組」,不定詞,分詞男性単数形,3人称男性単数過去形の4つの場合がある.ヘブライ語の側の第2のパラメーターは,その動詞がヘブライ語のどの動詞派生形であるかで,語根,Pa'al 型,Nif'al 型,Pi'el 型,Pu'al 型,Hitpa'el 型,Hif'il 型,Huf'al 型の8つの場合がある.以上の4つのパラメーターを組み合わせてイディッシュ語におけるヘブライ語起源の動詞を分類する.

次にこれら4つのパラメーター間の相関関係を検討し,特に,第1と第4のパラメーター間,第3と第4のパラメーター間の相関関係を指摘する.又,イディッシュ語におけるヘブライ語起源の動詞をすべて語根順に配列した場合,その語根の可能な動詞派生形と実際に取り込まれたものとの間にどのような相関関係があるかも考察する.

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