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「私に言われても困る」―受動文に関する一考察

大野 純子(大正大)

「私言われても困る」という文は「言われる人」がニ格で表されていて助詞に矛盾がある.「私」は「言われた人」であると同時に「困る」の経験主体でもある.この動詞の辞書形は一人称には直接使えるので「困る」の経験主体は「私」であると容易に想像できる.「*私に文句を言われてもむだだ」のように主節の述語が経験主体を要求しないものであると,従属節を受動文にすることができない.また,「言う」という動詞は「A から B へ」というように行為の向かう方向がはっきりしていて,まぎれようがない.この例文で,話者の表現したいことはまず第一に「『言う』という行為が自分に向かってきたこと」で,それを示すのが「言う」の到達点が自分であることを表すマーカー「ニ」である.

このような条件に合えば,ヴォイスの転換はラレにまかせて,動詞「言う」が求める,行為の goal を表す「ニ」を変えないということが可能になる.

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