『捷解新語』における基本形「スル」の不完成相の用法について
―『大蔵虎明本』との比較を通して―
金 光珠(麗澤大大学院)
本稿においては,17世紀の朝鮮資料である原刊『捷解新語』における「スル」の用例の中で現代語からすると不自然に感じられるものを対象に考察した上で,ほぼ同時期に書かれた『大蔵虎明本狂言』からの同様の用例を挙げ,室町時代末期日本語における「スル」に,現在の動作継続という不完成相のアスペクト的捉え方の存在していたことを明らかにしようとした.
その傍証となるものとしては,1) 当時の日本語における「シテイル(している・してある)」の意味・用法が現代の宇和島方言における「シトル」に似た振る舞いをしていること,2) 「終止形の連体形への合一化」という文法的変化が先代に持っていた「スル」の不完成相を表わす用法を維持させた可能性の高いこと,などを挙げた.