倒置構文と近接性
三浦 香織(大妻女子大大学院)
英語には,基本語順 (SVO) を逸脱した倒置構文が存在する.当該の構文は,前置要素(項 y),述語,後置要素(項 x)の三要素から構成される.本発表では,英語の倒置構文は,上述の三要素を個別に規定することにより適切に条件付けられると主張する.その際,〈近接性〉の概念と〈非対格仮説〉を前提とする.第一に,述語は以下の (1) あるいは (2) を表示する.(1)〈存在〉,(2)〈行為の結果〉または〈移動の結果〉.述語が (1) あるいは (2) を表示する場合,項 x と y は〈近接性〉を構成する.第二に,項 y は,〈具格〉および〈動作主〉を表示する前置詞であってはならない.第三に,基底レベルにおける述語の直接目的語(項 x)と場所格が交替する.ただし,直接目的語は重名詞句 (heavy NP) でなくてはならない.