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韓国語における平音,濃音,激音の対立に関する構音動態

吉岡 博英(筑波大)
金 順愛(筑波大大学院)

日本語を含む多くの言語での子音には,有声・無声の対立があるのに対して,韓国語には,平音・激音・濃音と呼ばれる3つの音の区別があり,本研究では,構音動態,とくに舌と口蓋の接触パタンの経時的変化の様子に着目し,加えて多角的な音響分析を行うことにより,韓国語におけるこれら3種の音韻を弁別する音声学的な特徴を明らかにすることを目的とした.

韓国語のソウル方言を母国語とする健康成人話者を被験者とし,韓国語の破裂音,破擦音,摩擦音の平音,激音,濃音を語頭に含む単語を選び,フレーム文に挿入して発話した際の舌と口蓋の接触パタンの経時的変化の様子をエレクトロパラトグラフィを用いて観察記録した.また音響分析には,マックスピーチラボIIシステムを用い,VOT と後続する母音の基本周波数,後続母音の長さ,子音+母音の長さの測定を行い,その平均値ならびに標準偏差を求めた.

その結果,舌と口蓋の接触時間は,平音,激音,濃音の順に長くなり,最大接触面もこの順で広くなることが分かった.また VOT の測定では,激音の場合がかなり長く,濃音では極端に短い.そして平音はその中間に分布していた.後続する母音の基本周波数の初期値の平均値は,濃音がもっとも高く,また開始後急激な下降を示し,平音,激音の水平パタンとは,かなり異っていた.また後続母音の平均の長さは,激音,平音,濃音の順で長くなり,VOT と逆の順となっていた.

これらの事柄から,平音,濃音,激音を区別する構音動作については,いくつかの要素が重層的に関わることにより実現されていることが明らかになったと考える.

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