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日英語の受け身文:語用論的分析

神尾 昭雄(獨協大)

本研究は日英語の受け身文に関する機能主義的研究のうち Bolinger (1975),久野 (1983),および高見 (1992,1995) による代表的研究を取り上げ,それらの問題点を指摘したのち,それらの成果を修正・発展させた発表者の見解を示したものである.

例えば,次の2例では

i) ??あの店は客に入られた.

ii) あの店は強盗に入られた.

第2例ではきわめて自然であるのに対し,第1例はかなり不自然である.また,以下の2例では

iii) ??The bridge has been walked under by a dog.

iv) The bridge has been walked under by generations of lovers.

英語の話者によると,(iv) は自然であるが (iii) はかなり不自然であるとされる.

これらの対照的な例を検討してみると,自然な例では,受け身の主語の指すものに関してある含意が得られることが注目される.例えば (ii) では「その店は被害をこうむっただろう」という含意が直ちに得られるが,(i) では何の含意も得られないかもしくは含意を得ることがはるかに困難である.同様にして, (iv) では "The bridge has such a romantic atmosphere" という含意が直ちに得られるのに対して,(iii) では橋に関するどのような含意も得にくい.

このような観察は,直ちに得られる含意を関連性理論 (Relevance Theory) における僅かなコストで得られる文脈効果 (contextual effect) とみなすことによって同理論により適切に定式化することができる.

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