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ブヌン語南部方言におけるいわゆる「焦点」について

野島 本泰(東京大大学院)

本発表では,ブヌン諸南部方言の,Actor-Focus (AF) と Goal-Focus (GF) について,両者を比較しながら,それぞれどのようなことを表すのか,どのような場合にどちらが使われるのか,について述べた.

疑問詞疑問文や名詞修飾節などでは,動作の主体が問題になっている場合には AF,動作の対象が問題になっている場合には GF が用いられる.この点では,ブヌン語の「焦点 (focus)」とフィリピン諸語の「焦点 (focus)」とは,似ていると言える.

ところが,動詞が,文(あるいは節)の主動詞として用いられている場合,AF・GF のうちどちらが選ばれるのかを調べてみると,ブヌン語とフィリピン諸語とではかなり話が違っていることがわかった.

タガログ語では,動作の対象が定である場合は GF,定でない場合は AF が用いられる.つまり,タガログ語では,AF・GF の選択は名詞句の側の事情で決まるのだ,と言える.

それに対し,ブヌン語では,事態の示され方が,そもそも AF と GF とで違う.GF は,「行為者が動作の対象に対してある行為をおこなう(あるいは)おこなった」という事態を,終端 (terminal boundary) をもったものとして示す.それに対し,AF は,「行為者が(動作の対象に対して)ある行為をおこなう(あるいは)おこなった」という事態そのものをそのまま表す形で,その事態が別の事態の背景をなすことを示すのにも使われる.

以上,ブヌン語の Actor-Focus と Goal-Focus について,問題の文が使われる状況・文脈に特に注意を向けながら,用例を検討した.その結果,先行研究 (Jeng [1977],何その他 [1986]) では指摘されていなかった諸事実を明らかにすることができた.また,問題の現象をタガログ語の平行的な現象と比較することで,その類似点・相違点を指摘した.

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