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日本語の主題素性の照合と句構造

三宅 知宏(大阪大大学院)

本発表は,日本語の主題素性とその照合について,またそれに関連して日本語の基本的な句構造について,Minimalist Program (Chomsky(1993,1994,1995)) の枠祖みに基づいて,分析することを目的とする.

本発表の内容は次の3点に集約される.

1)“自分”という形式の逆行束縛という現象に関して,従来,指摘されていなかった言語事実を提示する.2) 一般に「主格」という「格素性」が照合される位置であるとされる "AgrS" の指定部は,日本語のような「主題」が卓立している言語においては「主題素性」が照合される位置であることを主張する.尚,Chomsky (1995) では,"Agr" が廃止されるが,本発表においては最終的に,"TP" の上位に新たに,"Mood" を主要部とする "MP" が設定される.3) 1) において観察した言語事実は,2) の仮定に従えば,自然な説明が与えられることを述べる.

(1) 自分の父親が太郎の誇りだ/自分の美しい髪が花子の自慢だ

(1) のような,一種の心理を表す名詞句(心理名詞句)が述語になったコピュラ文において,体系的に逆行束縛の現象が観察される.(1) の“太郎の誇り”“花子の自慢”は,(1) と (2) の同義性からもわかるように,「主題」としての性質を持っていると言える.

(2) 太郎の誇りは自分の父親だ/花子の自慢は自分の美しい髪だ

“ハ”を伴っていない主題は,LF において "AgrSP" ("MP") の位置に "Move" により移動し,主題素性の照合を受けると仮定すると,(1) も LF においては,正しい C統御関係が得られることになる.尚,心理名詞句の場合,その心理の持ち主と同一の指標を受け取ることができると仮定される.“太郎iの誇り”→“太郎iの誇りi”のように.

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