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否定的なメッセージを伝える談話における話し手のストラテジー

吉田 愛(日本女子大大学院)

本研究では,これまで発話目的の種類に応じて,独立した発話行為として扱われてきた「断り」,「不満」などの発話行為を,「否定的なメッセージを伝える発話行為」として一括して取り上げた.このような発話行為はいずれも,聞き手の行為や考えを話し手が何らかの形で否定しているものであり,聞き手の face(顔)を傷つける恐れが非常に大きい FTAs (face-threatening acts) であると考えられる.このような場面では,話し手は聞き手との人間関係を円滑に保つための様々なストラテジーを使用しており,従ってこれらは敬語行動が顕著に見られる発話行為である.そこで,話し手が否定的なメッセージを伝えるストラテジーを,Brown & Levinson (1978, 1987) の politeness strategies の枠組みを用いて分析を行った.

自然に話された会話を録音し,文字化したものをデータとして分析した結果,次の3点が明らかになった.

1 話し手が否定的なメッセージを伝えるストラテジーは,A―聞き手の face(顔)を守るストラテジーと,B―話し手自身の face(顔)を守るストラテジーとの二種類に分けられる.

2 一つの談話の中での話し手のストラテジー使用の傾向は,A, B 二種類のストラテジーのうち,どちらか一つのストラテジーが主に使われるという共起関係にある.

3 話し手と聞き手の人間関係(ウチ/ソト)という要因が,話し手の使用するストラテジーの種類に与える影響は,話し手と聞き手がソトの関係にある時には,聞き手の face を守るストラテジー A が主として使われ,ウチの関係にある時には,話し手自身の face を守るストラテジー B が主として使われるというものである.

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