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言語表現における「トートロジー」
―その有意味化と効果について―

水田 洋子(大阪大大学院)

トートロジー(tautology: 恒真命題)の形式をとり単独では無意味な同語反復に見える言語表現―例えば「女は女だ (A woman is a woman)」,「約束は約束だ (A promise is a promise)」―が談語中でさまざまな意味・効果を持つのはなぜか.文字列として同一な2つの名詞句を主語および属詞とするコピュラ文(X-X 構文と呼ぶ)に対し,その有意味化と効果について主に言語理解とコミュニケーションの観点から考察し,種々の言語表現の中での位置付けを示す.以下を特徴とする: (1) 「X1 は X2 だ」において X2 は,X の内包に限らず世界知識に基づく X の諸属性を表し得ることを指摘し,それが文脈的に限定・理解されるしくみを知識との関連で示す.(2) 言語普遍的な部分に関心を置き,3言語(日,英,独)の実例分析と「思考実験」を併用.(3) 言語表現/理解における認知的側面,特に X-X 構文の発話に併行する心的活動の考察.(4) 応用として,「トートロジー」X-X 構文,オクシモロン(例.「あんな女は女でない」),メタファー(例.「彼女は太陽だ」)の統一的説明.

X-X 構文の有意味化は,他の言語表現と同様に,語および文の意味の知識/文脈依存性と発話行為との複合的作用に基づく.特に,数式や論理命題の場合と異なり言語表現においては,同一文中の同一語句が異なった意味(意義と指示対象)をとり得,また発話は含意を持ち得る.一方 X-X 構文は単純な表現形式により強調効果・説得性・遊び的要素等の修辞学的効果を生じる.X-X 構文は,有意味な内容面と同語反復の形式面との二重構造を持ち,論理のみならず心理・社会をも要素とする環境を存在基盤としている.

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