スペイン語複数形形成と韻律主要部に対する忠実性制約
菊池 清一郎(東北大大学院)
スペイン語の複数形は,母音で終わる単語には -s を,子音で終わる単語には -es を付加することによって形成される.しかしながら,語末の母音が強勢を持っている場合,-s ではなく -es が付加されるという例外的な複数形形成が見られる.本研究では,スペイン語の複数形形成について,複数形接尾辞の基成形を /es/ と仮定し,語末の母音と複数形接尾辞の母音 /e/ が融合することによって複数形が形成されるという分析を提案し,これにより母音挿入を仮定する先行研究の分析では不可能であった規則的な複数形と例外的な複数形の統一的な説明が可能となることを主張した.また,母音融合による分析では,語末の母音が強勢をもっている場合の例外的な複数形を強勢のある音節に対する忠実性制約の働きとしてとらえることができることを示した.