日本語を母語とする児童の心内辞書と音素認識の研究
大竹 孝司(獨協大)
坂本 洋子(獨協大)
坂本 洋子(獨協大)
本発表は,心理言語学で論じられている音素認識とローマ字の関係を明らかにするために,(1) 音素の削除,(2) 音素の移動という実験課題を用いて小学4年生8名(ローマ字未習児)と5年生8名(ローマ字既習児)を対象に3つの実験を行った.実験1では,2モーラ語を音声で提示し,語頭の音素を削除させ新たな単語を言わせた.その結果,両グループの被験者は,高率で新たな単語を言い当てることが可能であった.実験2では,2モーラ語2語を用いて1語目の第1モーラの子音を削除後,2語口の第1モーラの子音を移動させて新たな単語を言わせた.その結果,両グループの被験者はいずれも高い確率で認識することが明らかになった.実験3では,母音を操作させたところ,実験2と同様の結果となった.以上の結果は,ローマ字の獲得以前に音素を認識する可能性が高く,日本語の語彙認識モデルは音素を基本単位とする普遍的なものとの可能性がある.