動詞の習得 ―指示事象の特性と入力のタイミングとの関連性―
荒木 学(名古屋大大学院)
幼い子どもたちが言語を習得しようとする際には,アクセス可能な種々の言語的/言語外的手掛かりが存在している.近年の動詞習得研究の多くは,そのような習得を促進する手掛かりとなる情報に関する仮説を検証するという形で進められている.本研究では,手掛かりが相互に関連し合う複合的情報方略アプローチに基づき,実験を通して幼児期における動詞習得メカニズムの解明を試みた.まず,動詞が指示事象の特性により,入力が指示事象との時間的関係からいくつかに分類され,実験では「~動詞の習得には,~入力が効果的である」という図式から或る仮説の検証が行われた.結果は多くの面で仮説を支持するものとなり,動詞の特性と入力のそれとの関連性が示された.とりわけ,先行研究では実証されていない「指示事象と同時に与えられる入力の効果」に関しては,その明証が得られるに至った.