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「NPかどこか」,「NPなんか」の束縛変項解釈

高井 岩生(九州大大学院)

Reinhart 1983 以来,束縛変項解釈が成り立つための構造条件は,LF において量化詞が名詞を c 統御することだと考えられている.これは広く受容されている仮定であるが,厳密にはその妥当性はまだ示されていないと考えるべきである.束縛変項解釈と非常にまぎらわしい別の解釈 (quirky binding) が存在しており,これは c 統御と無関係に成立しうるからである (cf. Ueyama 1998).Ueyamaは,「3つのN」のように特定的に解釈できる量化詞を避けることによって quirky binding の可能性を抑えられると述べたが,Hayashishita 1999 は,どの量化詞でも特定的な解釈を完全に排除することはできないと指摘した.これに対して本発表では「NPかどこか」などの量化詞を「一社でも」などの特定の副詞と共起させれば quirky binding の可能性を完全に抑える環境を作ることができるということを主張し,これにより,Reinhart の主張の妥当性を経験的に示した.

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