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新派上海語変調の通時的特徴と共時的音韻分析における影響

髙橋康徳

本研究は、従来の新派上海語変調(tone sandhi)の共時的分析において未解決である「陽入声が第1音節である語の変調」(NE変調)の2つの問題点を指摘し、NE変調の通時的な特徴に着目することでこれらの問題が生じた原因を明らかにする。具体的な方策としては、上海語及び漢語呉方言変調の従来の通時的研究の限界を指摘した上で、上海語変調が持つ「語声調」の特徴に注目して、音韻語全体で実現するNE変調の変調パターンを1920年代生まれの上海語話者が使用した老派上海語の変調、及び近隣の無錫方言の変調と比較する。比較の結果、NE変調は他の新派上海語変調よりも通時的に古い変調パターンを保持している可能性を指摘する。これらの考察を踏まえた上で、従来の共時的分析はNE変調と他の変調との通時的段階の違いを考慮に入れなかったため、NE変調の分析に問題が生じたことを示す。

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