Belfast English の To 不定詞句補部に対するミニマリスト・アプローチ
松原 史典(日本大)
本発表では,BE の To 不定詞句補部の句範疇及び分布について,Henry (1992) の表示的アプローチ(GB 理論)に基づく CP 分析に疑問を投げかけ,派生的アプローチ(ミニマリスト)に基づく代案を提示する.代案として,BE には最初から複合屈折形態素の一部である for と補文標識である for の2つのタイプが存在することを指摘し,それぞれ異なる To 不定詞句構造 TP/CP の主要部を成すことを提案する.また,それら2つのタイプの To 不定詞句補部 TP/CP の選択に関しては,BE 特有の隣接条件が関与することを提案する.代案を採用すれば,Henry が想定する多くの余分な操作を排除することができるだけでなく,i) 補文標識 for と PRO とは共起不可能であり,ii) 補文標識 for を伴わない To 不定詞句補部は CP ではなく TP である(Bošković (1997), Iwakura (2001) など参照),というHenry の分析では捉えられない SE の一般化をも BE において維持できることを論証する.