チャクマ語のアクセントに関する通時的考察
藤原 敬介(京都大大学院)
チャクマ語は,バングラデシュ人民共和国・チッタゴン丘陵を中心として,近隣のインド共和国,ミャンマー連邦などで話されている言語である.チャクマ族は形質人類学的にはモンゴロイドに属する.しかし,チャクマ語は言語学的にはインド・アーリア系であり,ベンガル語チッタゴン方言に似ている.チャクマ語の中にどれだけの方言差があるかは不明であるが,本発表で扱ったのはチャクマ語カグラチョリ方言である.
本発表では筆者の観察に基づいて,チャクマ語カグラチョリ方言の音素についてまず概観した.続いて弁別的アクセントについて報告した.そして,アクセントは通時的には有気音や歯擦音に由来することを示した.さらに,接辞がつく場合のアクセント分布等も考慮することにより,アクセントは,基本的には,アクセントの同化規則と異化規則により記述できることを示した.