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琉球方言動詞の「終止形」をめぐる問題点
―八重山(石垣・宮良)方言動詞の -N と話し手―

伊豆山 敦子

琉球話方言(奄美・宮古を除く)で,「終止形」とされている形は,殆ど-N の形だが,八重山・宮良方言の -N は,話し手の認識・判断を示す形態素である.書く・起きるで例示.

(1) 補助動詞(コプラ)を除き,動詞は -N のある形と無い形が対になっている.
kak-u-N
kak-u
kak-i-N
kak-i
kak-ja-N
kak-ja
uk-ir-u-N
uk-ir-u
uk-i-N
uk-i
uk-ir-ja-N
uk-ir-ja
kak-ir-u-N
kak-ir-u
kak-ir-ja-N
kak-ir-ja
(2) -N が2人称代名詞と共起するのは質問文だけである(質問文不可のものもある).
(3) du(所謂係り結びの助詞)の有無に拘わらず,疑問詞のある質問文に -N は現れない.
(4) 談話参加者の共通認識がある時は-Nがあらわれない.
(5) 動作主体の人称に拘わらず,-N は話し手の判断認識を表している.
×ami phwo. N?   答えられる人はいない.  (雨に尋ねているようだ)
雨 降る?

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