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スンバワ語の否定表現

塩原 朝子(東京外大アジア・アフリカ言語文化研究所)

スンバワ語は,インドネシアのスンバワ島西部で話されている言語である.

スンバワ語には一般的な否定辞 no/nongka,禁止を表す否定辞 na の他に,否定辞 siong がある.siong は,否定する事柄の代わりに実際成立する事柄が siong を含むひとまとまりの発話の中で提示されている場合に用いられる.「代わりの事柄」は多くの場合文中に明示されるが,それが否定される事柄以外の唯一の論理的可能性として自明である場合は明示されないこともある.siong は,述部の前,副詞(句)の前,補語の前に現れ否定の焦点を明示するが,否定の焦点が補語の表す内容である場合は,siong は補語の前ではなく述部の前に置かれることが多い.これは,述部の表す内容と,補語の表す内容の意味的結びつきの強さによるものではないかと考えられる.

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