法助動詞 CAN と後続する述語との意味関係について
高橋 真弓(関西外国語大大学院)
本発表では individual-level/stage-level predicates という概念を導入し,法助動詞 CAN の意味と動詞句との関係を考察した.can(=「能力」)は i-level の性質を持ち,後続する VP は i-level で行為動詞を要求する.can(=「可能」),can(=「可能性」)は s-level の性質を持ち,spatiotemporal arguments を含意するために,i-level/s-level どちらの VP が後続しても,述部全体は s-level に解釈され,その文は existential の読みとなる.can(=「可能」)と can(=「可能性」)の違いは,前者は事象の1回の顕現が十分条件であるのに対して,後者のほうは事象の繰り返しが必要条件である点にある.繰り返し見られる特定の事象について言及しているため,can(=「可能性」)はexistential の読みでありながら反復的アスペクトを持ち,状態的な読みが現れるのである.