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形態素 -ish の多義構造

清水 啓子(熊本県立大)

英語の拘束形態素 -ish は名詞及び形容詞に後続し主に形容詞を派生させる接尾辞である.本発表では,この -ish は多義的であり,それぞれの意味派生プロセスは相互に関係したネットワーク構造を形成していることを,認知言語学的観点から指摘する.X-ish の意味構築パターンは大凡以下の3つに分類される: 1) X の典型的属性を持つ (girlish),2) X からのメタファー的な用法 (mulish),3) X への近似(値)(reddish, coldish, fiveish).この3つは同一の認知プロセス(参照点構造)を共有している.1) における典型的属性の抽出は,2) のメタファー的用法の前提となっているが,どちらも X-ishness という尺度の概念が関与する.2) から3) への拡張は三つの次元が関わる色彩領域(空間)を中継点とし,この複数のイメージスキーマが共存する領域で,際立つイメージスキーマのシフトが生じて,一次元の尺度(形容詞,数値)に拡張したのではないかと推論する.

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