親疎関係とコードスイッチング
―台湾におけるバイリソガリズムの場合―
陳 麗君(新潟大大学院)
本研究は,台湾人(中国語と台湾語のバイリンガル)におけるコードスイッチング(以下 CS と略す)および二言語の使用量を対象に,会話の話題および参与者間の親疎関係を考慮しながら時間に沿った流動的な変化を観察したものである.その結果,「疎の関係」にあった会話参加者の CS が時間軸に沿って変化することが明らかとなり,話題よりも親疎関係が言語使用により強く影響することがわかった.さらに,時間に沿って CS の文体変化が見てとれた.まず台湾語の使用が小単位の文末詞から大単位の文へと,また付加的要素から構成的要素へと変化し,最終的には基本構文が中国語から台湾語に変わっていった.さらに,情緒や感情表出には台湾語を用い,公用語である中国語は情報に対して使用されていたことから,二言語における機能的な分業が見てとれた.これらのことは,バイリンガリズムにおける CS の機能的分業および,その親疎関係との相関を示唆している.