属性の階層性とテイル構文
―事象叙述から属性叙述ヘ―
澤田 浩子(神戸大大学院)
事象叙述の中でアスペクトを表す補助動詞「-テイル」は,属性叙述の中で用いられるときに,どのような構文的・意味的特徴を持つのだろうか.「メアリーは青い目をしている」などのように,人間の「所有物」(特に,身体部分や性格など分離不可能性の高いもの)に関して属性を表す構文(以下「テイル構文」)を中心に考察し,次の点を明らかにした.
1) テイル構文は,存在が前提として認識されている所有物に対して,その属性の「有標性」を描写する構文である.したがって,所有物を表す名詞に付加される非限定的な修飾要素が必須であり,そこに叙述の焦点があると考えられる.
2) このようなテイル構文の特徴は,事象叙述の「-テイル」形式が持つ特徴からも位置付けることができる.すなわち,「動作の結果状態」を表す「-テイル」が時間推移における変化(「通時的相違」)の認識に基づいているのに対し,属性叙述の「テイル構文」はそれを空間に置き換え,他項との対比・きわだち(「共時的相異」)として認識しており,それが「属性の有標性の描写」という特徴に反映していると考えられる.