一時的状態述語/一時的属性述語としての「VNする」
中村たか子
影山(2009a)は、時間軸はあるものの展開がない状態文で使われる述語を場面レベル述語とする一方、時間軸・展開の双方がない属性文で使われる述語を個体レベル述語とする。さらに事象・属性叙述文の統語構造上の違いは「出来事項の有無」にあるとも述べる(影山2009b)。本発表ではヲ格をとる「VNする」について副詞との共起、「様子」との共起、時間軸、展開、出来事項などの観察を行い、状態文で使われる場面レベル述語としての「VNする」を提言する。具体的には「携帯する」を状態性が低く事態述語に近い一時的状態述語、「所有する」をより状態性が高く属性に近い、つまり一時的状態と属性の中間に位置する一時的属性述語と考える。また「所属する」について、影山(2009a)とは異なる見解を示すとともに、それが一時的属性述語であることにも言及する。本発表での議論は「事象叙述と属性叙述は人間言語における2つの独立した叙述機能」であるが、「2つの世界は完全に分断されたものではない」とする影山(2009b)を支持する結果となる。